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弁護士・公認会計士 洪 勝吉

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相続放棄ができなくなる場合-相続財産の処分

民法は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときには単純承認をしたものとみなされると規定します(民法921条1号)。
単純承認がなされた場合には、相続放棄ができなくなります(919条1項)。
この規定の趣旨は、相続財産の処分には単純承認(=無限に被相続人の権利義務を承継すること(920条))の意思が含まれていると認められることや、処分を信頼した第三者の保護をはかることにあるとされます。

どのような「処分」が単純承認になるか

「処分」とは、財産の現状、性質を変更する行為をいい、法律行為みならず、事実行為も含むと定義されています。

例えば、相続財産に高価な絵画があったとして、この絵画を売却することは売買契約という法律行為による処分になります。この絵画を破いたりすれば、損壊という事実行為による処分に当たります。

相続財産を「処分」したとされると、それ以後、相続放棄ができなくなってしまいます。
このような重要な法律効果が生じますので、そのような効果を与えるのに妥当な程度の「処分」でなくてはならないと理解されています。
 

「処分」に当たるもの、当たらないもの

裁判で争われた事例の中では、次のようなものが処分に当たるとされました。

・被相続人の預貯金の名義を自分のものに変更する
遺産分割協議を成立させる
・相続財産である売掛債権を回収する
・相続財産である株式について株主権を行使する
・相続債務を遺産から弁済する

他方で、処分に当たらないとされたものとして次のようなものがあります。
・遺体や、遺体が所持していた身回り品・金品の受領
こちらについては、遺族として当然とされる部類として、単純承認がみなされるようなものとは言えないでしょう。

・遺産ではない生命保険金の受領
こちらは、民法上の相続財産には当たりませんので、処分には当たりません。相続債務を、遺産ではなく、相続人の個人財産から支払っても、相続財産には関係がありませんので、処分に該当しません。

・遺産から葬式費用、火葬費用、治療費を支払ったこと
・遺産から仏壇や墓石の購入費用を支払ったこと
裁判例では、これらが処分に当たらないとしたものがあります。しかし、金額の多寡によっては注意が必要でしょう。高額な葬式費用などについては、遺産から支出することは避けたほうが無難です。
 

一般化が難しい場合がある

裁判例でも様々な行為が問題とされていますが、単純承認とみなすという効果を与えるのに妥当な程度の「処分」かどうかが最終的な判断基準になります。そのため、最後は程度問題になるケースも生じます。
例えば、先ほど、処分に当たるとされた事例の中に「遺産分割協議の成立」がありました。別の事例で、多額の負債が存在することを知らないで特定の相続人に全ての遺産を取得させる内容の遺産分割を成立させたことについて、処分に当たらないとしたものもあります。
また、前記のとおり、「相続財産である売掛債権の回収」が処分に当たるとされた裁判例がありましたが、相続財産となる出資金返戻金を受領したもののすぐに返金したという別の事例では処分に当たらないとされました。

このように、ある行為が一概に処分に当たる、当たらないと言えないケースもあり、慎重な判断が必要です。
 

ありがちで注意が必要なケース

ありがちな事例として、被相続人の所得税について準確定申告を行い、還付が発生することがあります。ここで、還付金を相続人が受領すると、相続財産の処分に当たるリスクがあります。
ほかには、被相続人に受け取る権利がある入通院の給付金など医療保険の給付金についても相続財産に当たるので、受け取ることには注意が必要です。
もし、相続財産に当たるものを受領してしまったとしても、すぐに返金するなどの対応で単純承認とならなかった事例もあります。慎重に対応を検討するようにしましょう。

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