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弁護士・公認会計士 洪 勝吉
〒060-0042 北海道札幌市中央区大通西10丁目4 南大通ビル2F
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遺産分割を行うためには、相続人全員の合意が必要になります。
遺産分割に協力しない相続人がいる場合や合意が成立しない場合には、最終的には裁判所での遺産分割審判による解決がありえますが、時間や費用、柔軟性などにデメリットが生じる点があります。
今回は、非協力的な相続人がいる場合の解決方法を見ていきましょう。
【目次】(2023.03.26)
1.調停に代わる審判とは
2.調停に代わる審判がなじむケース・なじまないケース
3.調停に代わる審判のメリット
裁判所の関与しない形での遺産分割協議が成立しない場合、裁判所で話し合いを成立させる遺産分割調停と、裁判所の判断による遺産分割審判によって解決を目指すことになります。
遺産分割調停については、裁判所が関与することにはなりますが、性質としては相続人間の話し合いですので、相続人全員の合意が必要です。
そのため、単に面倒であるといった理由であっても、調停の場に出て来ないような相続人がいる場合には、遺産分割調停も成立しません。
そこで、調停と審判の中間に位置するものとして、調停に代わる審判(家事事件手続法284条1項本文。以下では「284条審判」といいます。)というものがあります。
284条審判は、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して裁判所が行うものと定められています。
そのため、284条審判は、次のようなケースで利用されています。
①出頭当事者が調停条項案に合意し、不出頭当事者についても合意の意向が事実上確認できている、
②不出頭当事者の意向が確認できないため調停が成立しないが、出頭当事者間では条項案の合意ができ、かつ、その合意内容が相当である、
③手続追行の意欲を失い調停期日に出席しない当事者がいる、
④わずかな意見の相違で合意に至らない、
⑤感情的対立から調停での合意は拒否するが、裁判所の判断には従う意向を示す当事者がいる
284条審判については、当事者から適法な異議の申立てがなされた場合には、異議の理由の内容にかかわらず、効力を失います。
特別受益や寄与分に関する対立が大きい場合など、284条審判を行っても異議申立てをされる可能性が高い場合には、かえって時間を浪費することになるため、284条審判ではなく通常審判の手続が進められることになります。
また、当事者双方の衡平を考慮するため、当事者が想定できないような内容は相当でなく、284条審判は行われません。
例えば、非協力者の取得額が法定相続分を下回る、非協力者への送付書類(申立書の写しなど)から読み取り難い協議事項が含まれる、換価することが容易でない遺産(不動産や非上場株式など)を非協力者に取得させる内容を含むような場合には284条審判を行うことは不相当と考えられます。
284条審判は、通常審判よりも、簡易迅速に手続きを進めることができます。
特定の遺産を現物分割や代償分割する場合には、他の遺産の取得や代償金の要否や金額を判断する資料として、分割時の評価額を確定する必要があります。
また、特別受益や寄与分が問題となる場合には、みなし相続財産を算定するため、相続開始時の評価額を確定する必要も生じます。
通常審判では、不動産や非上場株式が遺産に含まれる場合、鑑定をせざるを得ない場合もありえます(審判と相続開始の時点が大きく異なれば2時点の鑑定が必要になります)。
鑑定費用は当事者の費用負担により行われますが、低額ではなくあらかじめ予納する必要があり、予納が期待できない当事者がいる場合には、誰かが立て替えなければなりません。
これに対し、284条審判では、出頭当事者間で一定の合理的な根拠に基づいた評価額により合意ができれば、鑑定をせずに284条審判を行うことが可能ですので、鑑定費用や鑑定に要する時間が節約できます。
遺産である不動産の賃料(遺産収益)や相続債務など通常審判では対象に含まれない事柄があります。
これらについても一定の場合には284条審判の対象に含めることも可能です。
さらに、分割方法について、通常審判では、当事者の意向も考慮されますが、基本的には、現物分割→代償分割→換価分割→共有分割の順番に分割方法が検討されます。
284条審判では、より柔軟な分割方法が可能です。
例えば、代償分割の場合、代償金の支払いについて、通常審判では確定額かつ即時の支払による条項が設けられますが、284条審判では、分割払いや期限の猶予、不確定額の代償金といった柔軟な内容も可能になる場合があります。
換価分割でも、任意売却の可能性の程度を考慮して、一定の任意売却期間を設けて、その期間が経過したあとは各自が単独で競売申立てを可能とする内容にすることなども可能です。
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