札幌の弁護士・会計士に遺産分割交渉・調停などの相続の相談をするなら
弁護士・公認会計士 洪 勝吉
〒060-0042 北海道札幌市中央区大通西10丁目4 南大通ビル2F
(札幌市営地下鉄東西線 西11丁目駅3番出口直結 専用駐車場:無し)
こちらの事例をもとに戸籍の調査をどのように行っていくかを確認したいと思います。
親族関係についての情報は次にようなものでした。
・札幌健一さんの父・札幌次郎さんは20年ほど前に死亡。
・健一さんの母(次郎さんの配偶者)は、父・次郎さんが死亡する前に死亡。
・健一さんには兄弟はいない。
・健一さんの伯父・札幌太郎さんは40年ほど前に死亡。
・健一さんは詳しく知らないが、太郎さん・次郎さんには、少なくとも弟・三郎さんがいる。
・札幌の実家の土地の一部に伯父・太郎さんの名義のものがある。
【目次】(2022.08.07)
1.戸籍調査の手順
2.①配偶者がいるか
3.②子供がいるか、③孫など代襲者がいるか
4.④直系尊属がいるか
5.⑤兄弟姉妹がいるか、⑥その子がいるか
6.法定相続情報証明制度
これまで見てきたとおり、相続人の順位は次のとおりです。配偶者以外の相続人を血族相続人といいます。
(常に相続人)配偶者
(第1順位)子・・・・・無制限に代襲相続あり
(第2順位)直系尊属
(第3順位)兄弟姉妹・・代襲相続あり
戸籍の調査もこの順位に従って、次のように行います。
①配偶者がいるか
②子供がいるか
③子供に死亡者がいる場合、孫など代襲者がいるか
④子供、代襲者がいない場合、直系尊属がいるか
⑤直系尊属がいない場合、兄弟姉妹がいるか
⑥兄弟姉妹に死亡者がいる場合、代襲者となる子がいるか
そして、今回の事例のように2つの相続(札幌次郎さんと札幌太郎さん)が関係するときは、それぞれの相続人を調査することになります。
配偶者は常に相続人になります。そして、被相続人の死亡時点の戸籍を見れば、被相続人に配偶者がいるかどうか確認できます。
死亡前に離婚していれば、もちろん相続人にはなりません。
次郎さんの相続については、その死亡時点の戸籍を見ることで分かります。
同様に太郎さんの相続についても、その死亡時点の戸籍を確認します。
配偶者の場合は、配偶者がいても血族相続人が存在しますので、配偶者がいることが確認されても、次の段階に進む必要があります。
配偶者と異なって、被相続人の死亡時点の戸籍を見ても、被相続人に子供がいるかどうかは完全に確認できません。
戸籍が新しくなると、それ以前に戸籍から出た人は、戸籍に記載されなくなるためです。
被相続人が婚姻していなくても、非嫡出子や養子が出現する可能性がありますので、被相続人が生まれた時点まで遡って戸籍を取得することになります。
子供が存在していれば、その生死を確認することになります。子供が相続開始前に死亡していることが確認されれば、孫など代襲者がいるか、孫がいればその生死を確認します。
子供の場合、孫の子供も代襲者になる(無制限に代襲相続の適用がある)ためです。
事例では、健一さんには兄弟はいないことになっていますが、そのことを戸籍で証明しなければいけませんので、戸籍の収集は欠かせません。
そこで、次郎さんの相続については、次郎さんの出生から死亡までの戸籍を取得します。なお、健一さんのお母さんの戸籍を取得する必要はありません。健一さんのお母さんに子供がいても、次郎さんとの子供でなく、養子縁組もしていなければ、相続人にはならないためです(ただし、昭和22年改正前の民法では、連れ子(継子)にも相続権が認められていましたので、古い相続の場合は注意が必要です)。
健一さんに兄弟がいないことが確認されれば、次郎さんの相続については、健一さんが唯一の相続人ということで調査が完了します。
太郎さんの相続についても、その出走から死亡までの戸籍を取得します。太郎さんに子供がいないことが確認されれば、次の段階に進みます。
子供もその代襲者もいなければ、次に直系尊属の生死を確認します。
親の生死については、②③の調査の過程で確認できることも多いです。
太郎さんの親が、太郎さんより前に死亡しているかどうかは、これまでの戸籍調査で確認できるでしょうから、次の調査に進みます。
②③④の結果、子や直系尊属がいないことが確認されれば、最後に兄弟姉妹の有無を調査します。
兄弟姉妹の有無を戸籍から確認することは通常大変です。
被相続人の親の子供(=被相続人の兄弟姉妹)の有無を確認することになりますので、②のときと同じ趣旨で、被相続人の親の出生から死亡までの戸籍を取得する必要があるためです。
兄弟姉妹は、被相続人の「親」の子供ですので、父母両方の出生まで遡って戸籍を取得しなければいけません。半血の兄弟であっても相続人になります。なお、戦災による焼失や津波による消失、保存期間経過による廃棄などによって戸籍が取得できない場合には、自治体に戸籍が交付できないことについての「告知書」を取得し、判明した限りの者を相続人として手続を進めます。
兄弟姉妹がいれば、その生死を確認し、相続開始前に死亡していれば、その子がいるかを調べます。
兄弟姉妹の子が相続開始前に死亡していても、さらにその子がいるかを確認する必要はありません。兄弟姉妹には再代襲相続が適用されないためです。しかし、以前に見た通り、1980年12月31日以前に開始した相続については、兄弟姉妹についても無制限に代襲相続が適用されますので、兄弟姉妹の子供が相続開始前に死亡していれば、さらにその子がいるか調査する必要があります。
太郎さんの兄弟が、次郎さんと三郎さんであることが確認されれば、相続人の調査は完了です。
次郎さんは死亡していますが、太郎さんの相続開始後に死亡しているので、代襲相続ではなく、健一さんが、次郎さんの相続人として権利を取得することになります(順次相続)。
健一さんは三郎さんの生存を確認し、三郎さんに意向を確認したところ、三郎さんは太郎さんの相続を放棄していることが判明しました。相続放棄は、代襲相続の原因にはなりませんので、三郎さんの子供の有無を調べる必要はありません。
相続人の調査では、大量の戸籍が必要となる場合も多いです。戸籍は、不動産の登記を法務局に申請する場合や、金融機関への口座情報の照会、遺言の検認や遺産分割調停の申立てなどする場合にはその都度提出が求められます。
そこで、法務局の法定相続情報証明制度を利用し、「法定相続情報一覧図の写し」を取得すれば、戸籍を提出する手間を省くことができます。
法定相続情報一覧図に続柄を記載すれば、相続税の申告書の添付書類としても使用できるようになりました。
また、一覧図に住所地を記載すれば、相続登記の際の相続人の住民票の写しも不要です。
このページを見た人がよく見るページ
遺産分割の進め方
遺産分割の進め方-相続人になる場合、ならない場合
遺産分割の進め方-戸籍をどう調査する
予期しない相続人の判明
遺産分割に協力しない相続人がいる場合の解決方法
「借地人が死亡して相続人がいないとき」を更新しました。
「遺産に非上場株式がある時」を更新しました。
「祭祀承継者とはどのような人か」を更新しました。
〒060-0042
北海道札幌市
中央区大通西10丁目4
南大通ビル2F
札幌市営地下鉄東西線 西11丁目駅3番出口直結
専用駐車場:無し
9:30~18:30
土曜・日曜・休日