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弁護士・公認会計士 洪 勝吉
〒060-0042 北海道札幌市中央区大通西10丁目4 南大通ビル2F
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今回は相続人の確定について、事例をもとに見ていきたいと思います。
札幌健一さんは、大学進学とともに東京に出てきて、そのまま東京で就職しました。
実家は札幌にありますが、20年ほど前に父親(次郎さん)が亡くなって空き家のままになっています。
先日、ある企業から実家不動産を購入したいと連絡があったので、登記簿を確認したところ、実家の土地の一部が、40年ほど前に亡くなった伯父さん(太郎さん)の名義であることに気が付きました。
太郎さんには妻や子供はいなかったようです。
伯父・太郎と父・次郎には弟(三郎さん)が一人いますが、ほとんど付き合いはなく、親族の関係は分かりません。
健一さんのお母さんは父・次郎さんが亡くなる前に亡くなっていて、健一さんに兄弟はいません。
健一さんとしては、実家の土地を売却するため、土地の名義を自分に変えたいと思っています。
そのためには、伯父・太郎さんの相続人と話をつけなければいけませんので、相続人の調査が必要になります。
この例の親族関係などをまとめると次のようになります。
・健一さんの父・次郎さんは20年ほど前に死亡。
・健一さんの母は、父・次郎さんが死亡する前に死亡。
・健一さんには兄弟はいない。
・健一さんの伯父・太郎さんは40年ほど前に死亡。
・健一さんは詳しく知らないが、太郎さん・次郎さんには、少なくとも弟・三郎さんがいる。
・札幌の実家の土地の一部に伯父・太郎さんの名義のものがある。
【目次】(2022.7.30)
1.相続人の確定と民法の適用関係
2.2013年9月5日から現在まで
3.2001年7月1日から2013年9月4日まで
4.1981年1月1日から2001年6月30日まで
5.1962年7月1日から1980年12月31日まで
6.古い相続に注意
遺産分割は相続人全員の合意がなければ成立しません。
そして、相続人が誰であるか、相続分の割合がどの程度かは、民法によって定められます。
ここでいう「民法」とは、その相続が開始した(被相続人が死亡した)当時に施行されていた「民法」です。
相続開始時点より後に施行されたり、相続開始時点ではすでに効力を失っている民法は原則適用されません。
改正前の民法が施行されていた最中に相続が開始した場合、改正後の民法の施行後に相続に関する手続がなされたとしても、適用される民法はあくまで改正前の民法です。
そのため、今回の事例のように、数十年前の相続が関係するような場合は、相続人を確定するに当たって、過去の民法改正がどのようなものであったかを知る必要があります。
上の表が現在施行されている民法の相続人、法定相続分に関する定めです。
この期間の民法では、非嫡出子(婚姻関係にない男女の間で生まれた子)の相続分は、嫡出子の相続分の2分の1と定められていました。
しかし、この規定について、平成25年9月4日最高裁判所大法廷決定が、遅くとも平成13年7月当時において、法の下の平等を定める憲法14条1項に違反していたとの決定を下しました。
そのため、この期間内に開始した相続については、民法の条文にかかわらず、嫡出子と非嫡出子の法定相続分は同じものとして取り扱われます(なお、上記最高裁決定以前に成立した遺産分割などの効力には影響を与えないものとされました。)。
その後に民法の条文自体が改正され、2013(平成25)年9月5日に遡って適用されています。そのため、現在の民法の定めでは嫡出子と非嫡出子の法定相続分は同じです。
この期間の民法でも、非嫡出子(婚姻関係にない男女の間で生まれた子)の相続分は、嫡出子の相続分の2分の1と定められていました。
平成25年9月4日最高裁判所大法廷決定は、平成13年6月以前に開始した相続については言及がありませんので、嫡出子と非嫡出子の法定相続分が異なることになります。この点以外は現在と同じです。
現在と比較すると、法定相続分に関しては、配偶者に配分される相続分が少なくなっています。
また、相続人については、兄弟姉妹の代襲相続が無制限に適用される点に注意が必要です。
現在の民法では、相続開始前に被相続人の兄弟姉妹が死亡していたときは、兄弟姉妹の子までしか相続人とはなりませんが、1980年12月31日以前に開始した相続では、相続開始前に兄弟姉妹、その子が死亡していても、さらにその子(兄弟姉妹の孫)が相続人となります。
いままで見てきたように、古い相続が関係する場合には、適用される法律の内容が現在と異なることがあります。戦前の相続が関係する場合には、家督相続などが関係してくることにもなります。
今回の事例では、健一さんの父・次郎さんは20年ほど前に亡くなり、伯父・太郎さんは40年ほど前に亡くなっているため、死亡した年によっては、法改正が関係するため注意が必要です。
次回以降に今回の事例について具体的に見ていきたいと思います。
「借地人が死亡して相続人がいないとき」を更新しました。
「遺産に非上場株式がある時」を更新しました。
「祭祀承継者とはどのような人か」を更新しました。
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