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弁護士・公認会計士 洪 勝吉

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遺産分割の進め方ー相続されるなるもの、されないもの

前回までで、遺産分割の当事者である相続人について見てきました。
今回は、相続の際に、被相続人から相続人に相続(承継)されるもの、されないものを確認していきます。

相続の対象になるもの

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条)。

一切の権利義務の中には、所有権も含まれますし、債権債務や契約上の地位も含まれます。
「相続開始の時」とは被相続人が亡くなった時ですので、死亡時に被相続人に帰属する権利義務が相続の対象になります。
権利だけでなく、義務も相続の対象となりますので、被相続人の借入金なども相続の対象になります。
 

相続の対象にならないもの:一身専属性を有するもの

先ほど見た民法896条は引き続いて、「ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」と定めており、一身に専属する権利義務は相続の対象にはなりません。

遺留分侵害額請求権

一身専属権の中には「行使上の一身専属権」と呼ばれるものがあります。遺留分侵害額請求権(旧相続法では遺留分減殺請求権最高裁平成13年11月22日判決)は、行使上の一身専属性があるとされ、債権者代位の目的とすることはできません(民法423条1項ただし書)。
しかし、民法1046条では「遺留分権利者及びその承継人」と遺留分侵害額請求権が承継の対象となる権利であることが示されており、相続の対象となる権利に含まれます(同最高裁判決では「帰属上の一身専属性を有しない」と表現されています。)。

財産分与請求権

離婚の際に、当事者の一方は相手方に財産分与請求権(民法768条1項)を行使することができます(行使された相手方からみれば財産分与義務)。
財産分与請求権は離婚によって初めて発生する権利であるため、離婚前に死亡したときは、相続の対象にはなりません
離婚後の相続に関しては、その一身専属性を根拠に相続を否定する見解も有力ですが、財産分与請求権の相続性を認めた裁判例もあります(扶養的財産分与義務の相続性を認めたものとして大分地裁昭和62年7月14日判決(ただし、死亡したのは義務者)、名古屋高裁昭和27年7月3日決定)。
離婚後の相続については、少なくとも清算的財産分与については相続の対象となり得ます。

労働契約上の地位

雇用契約はその人的個性が重視される契約であり(民法625条)、労働契約上の地位は一身専属で相続の対象とならないと理解されています(最高裁平成元年9月22日判決)。

著作権

財産権としての著作権は当然に相続の対象となります。なお、JASRAC等の著作権管理団体に信託譲渡している場合には、信託受益権が相続の対象になります。
著作者人格権(公表権、氏名表示権、同一性保持権)については、一身専属性を有しており(著作権法59条)、相続の対象にはなりません。ただ、著作者の死亡後に著作者人格権が侵害されたときは、遺言に別段の定めがない限り、遺族が損害賠償等を行使できるとされています(同法116条)。
 

相続の対象にならないもの:法律に明記されているもの

明文で相続されないと定められているものとして次のようなものがあります。
代理権(民法111条1項)。本人又は代理人の死亡により消滅します。
定期贈与(同552条)。贈与者又は受贈者の死亡により効力を失います。
使用貸借の借主の地位(同597条3項)。借主の死亡により終了します。ただし、建物の所有を目的とした土地の使用貸借契約については、建物所有の用途にしたがってその使用を終えたときに終了するとの特約がなされたと認められ、借主死亡によって終了しないとされることがあります。
委任契約上の地位(同653条)。委任者又は受任者の死亡により終了します。
民法上の組合員の地位(同679条1号)。組合員の死亡により脱退します。
祭祀財産(897条1項)。祭祀承継者が承継します。遺体・遺骨についても祭祀財産に準ずるものとして祭祀承継者に帰属するとされます(最高裁平成元年7月18日判決)。
持分会社における持分(会社法607条1項3号)。ただし、会社の定款で相続人が持分を承継できる旨を定めることができます(同法608条1項)。清算持分会社の場合は定款の定めがなくても相続の対象となります(同法675条)。清算会社では事業を行いませんので、社員の個性が重視されず、純粋な財産権に近づくためです。
 

相続の対象にならないもの:相続人等の固有財産とされるもの

生命保険金など

生命保険金については受取人の指定または保険約款により、保険金の受取人の固有財産になるため、相続の対象にはなりません(最高裁昭和40年2月2日判決)。傷害保険の死亡保険金についても同様です(最高裁昭和48年6月29日判決)。ただし、受取人の指定がなく、かつ約款にも規定がない場合は相続の対象になります。

遺族給付

次のように遺族などに給付することが定められているものについては、受給者の固有財産となり、相続の対象にはなりません。

国家公務員の死亡退職手当 国家公務員退職手当法の定めにより受給者が決まり、その者の固有財産となるため、相続により承継されるものではありません。
地方公務員の死亡退職手当 国家公務員退職手当法に準ずる条例が定められており、この条例に基づき受給者が決まるため、相続財産にはなりません。
民間企業の死亡退職金 社内規程の定めにより、受取人が指定されているか「相続人」と規定されていればこの規定により取得するので、相続財産ではありません。社内規程に受取人の定めがなければ相続の対象になる場合があります。
遺族年金 遺族基礎年金、遺族厚生年金のどちらも、遺族の生活保障を目的としてそれぞれの根拠法令の定めにより支給されるものですので、相続財産ではありません。
小規模企業共済の共済金 小規模企業共済法の定めに基づき受給者が決まるため、相続財産ではありません。
未支給年金 それぞれの根拠法令の定めにより受給者が定まるものですので、相続財産にはなりません。

その他

埋葬料・葬祭費 遺族に支給されるもので、被相続人から承継されるものではありませんので、相続財産にはなりません。
高額療養費 被相続人の生存中に請求権が被相続人に帰属するものであるため、相続財産になります。
還付金請求権 被相続人の生存中に潜在的な請求権が被相続人に帰属していたため、相続財産になります。還付加算金については、確定申告書の提出により原始的に発生するため、相続財産にはなりません。


受給権者の固有財産となるものについては、遺産分割協議が成立しなくても受け取ることができます。また、相続により承継するものではありませんので、相続放棄をしたとしても受け取ることができます。

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