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弁護士・公認会計士 洪 勝吉
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今回は、長い間交流のない前妻との間の子に対して遺産を渡したくないという場合(相続人は前妻の子1人と後妻のみとします)に、どのような手段がありうるか見ていきます。
前妻との間の子と言っても実子ですので相続権があります。相続分は後妻2分の1、子2分の1となり、子の遺留分は4分の1です。
前妻との間で離婚が成立しているので、前妻は配偶者ではなく、相続権はありません。
【目次】(2023.9.19)
1.推定相続人の廃除
2.相続開始前の遺留分の放棄
3.遺言書の作成
4.相続放棄の要請
まずは、前妻の子から、相続人としての資格を剥奪する方法を考えてみます。
民法892条には「推定相続人の廃除」という規定があり、推定相続人に一定の行為があったときは、被相続人(生前)又は遺言執行者(遺言で廃除の意思表示をした場合)が、家庭裁判所に廃除の請求を行うことができます。
ただ、廃除の原因としては、3つの行為(虐待、重大な侮辱、その他の著しい非行)が定められていますが、推定相続人としての資格を奪うほどの重大なものである必要があります。
比較的最近の裁判例(大阪高等裁判所令和元年8月21日決定)では、被相続人に対して少なくとも3回にわたって暴行に及び、全治約3週間を要する骨折等の傷害を負わせた推定相続人の行為が「虐待」又は「著しい非行」に当たるして廃除したものがあります。
このような事例でも、原審(大阪家庭裁判所平成31年4月16日決定)では、被相続人の言動が暴行を誘発した可能性を否定できないとして廃除の申立てが却下されており、相当に酷いものでなければ廃除が認められる可能性は低いと考えたほうがよいでしょう。
今回の事例では、前妻の子と長い間交流がないということですので、廃除原因の存在は認められないと考えられます。例えば、同居していた少年時代に相当な非行があったという事情があったとしても、廃除が認められることはほとんどないでしょう。
遺留分の権利者は、相続開始前に遺留分を放棄することができますが、家庭裁判所の許可が必要です(民法1049条1項)。
遺留分権利者が放棄を強要され、戦前のような長子単独相続を実現する目的に濫用されることのないよう、家庭裁判所の許可が必要とされています。
そのため、放棄者の自由意思性、放棄理由の必要性・合理性、放棄と引き換えとなる代償措置の有無などを考慮して許否が判断されます。
したがって、単に遺産を渡したくないという理由では許可されません。
また、相続開始後であっても、一定の場合には放棄の撤回(取消)が可能とする裁判例(東京家庭裁判所平成2年2月13日決定。ただし、結論としては取り消しを認めず)もあり、例えば遺産総額を放棄者が正しく認識していない(錯誤していた)場合には、遺留分放棄許可が取り消される可能性があります。
現在の配偶者に対して全ての遺産を相続させるとの遺言を作成します。
前妻との子に遺留分4分の1がありますので、子から遺留分侵害額請求がくれば対応する必要があり、遺留分額を金銭で支払うことになります。
もう一つの方法として、遺言の中で、前妻との子に対し、一定の金員を相続させる内容にすることも検討に値します。
こちらのコラムにも記載しましたが、遺留分の金額は流動的な面がありますので、遺留分に満たない程度の金員を相続させることで、裁判をしてまで追加の請求をするかどうか躊躇させることはありえるでしょう。
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