札幌の弁護士・会計士に遺産分割交渉・調停などの相続の相談をするなら

弁護士・公認会計士 洪 勝吉

〒060-0042 北海道札幌市中央区大通西10丁目4 南大通ビル2F
札幌市営地下鉄東西線 西11丁目駅3番出口直結 専用駐車場:無し)

被相続人が死亡してから3か月を経過した後の相続放棄ー熟慮期間について

相続放棄をいつまでに行わなくてはいけないのかは民法で定められており、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内にしなければなりません(民法915条1項)。この3か月の期間を熟慮期間と呼んでいます。
しかし、被相続人が死亡したことを知って3か月たった後に、被相続人に多額の債務が存在することが発覚するケースがあります。
このようなときに相続放棄が可能か確認していきます。

相続放棄とは

相続放棄は、自己のために開始した相続の効力を確定的に消滅させる効果を持つものです。
相続放棄をすることにより、被相続人が死亡した時にさかのぼって、初めから相続人とはならなかったことになります(民法939条)。
相続放棄は、家庭裁判所に対する申述という定まった様式で行わなければなりません(民法938条)。
そのため、特定の相続人に遺産のすべてを集中して取得させる遺産分割協議書を作成したり、相続分不存在証明書といった文書を作成し、特定の相続人に遺産の名義を移転しても、正式な相続放棄としての効力はありません。

遺産分割の対象についてのページでも確認したとおり、金銭債務は可分債務ですので、相続と同時に法定相続分に従って当然に分割されます。
相続債務について、遺言書で引受人を定めても、遺産分割協議で承継する相続人を相続人間で合意しても、債権者に対して効力が生じるわけではありません。
そのため、正式な相続放棄をしないまま、被相続人の死亡から月日がたって、多額の相続債務が発覚し、相続人として請求をされた場合に、相続放棄が可能かどうか上記の熟慮期間との関係で問題となります。
 

熟慮期間が始まる時

熟慮期間が始まるのは、先ほども述べたとおり「自己のために相続の開始があったことを知った時」です。「自己のために相続の開始があったことを知った時」とはいつのことを指すのかが問題になります。
この点には、実務上の判断準則として確立されている最高裁判例(最高裁昭和59年4月27日判決)があり、次のように判断します。

(原則) ア 被相続人の死亡、イ 自分が相続人になったこと の2点を覚知した時
例外) アイを覚知した後であっても、①被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたこと、②そう信じたことに相当な理由があること の2点を立証できた場合には、相続債務などがあることを知った時

原則は、被相続人が亡くなり(ア)、自分が相続人であること(イ)を知ったときから進行します。被相続人の配偶者(常に相続人)や子ども(第1順位)であれば、死亡の連絡を受けた時に熟慮期間が始まります。
例外として、積極財産・消極財産(債務)が全く存在しないと信じ、信じたことに相当な理由があるときは、相続債権者から相続債務の請求があるなどして相続債務の存在を知った時から熟慮期間が始まるとされます。
 

例外要件① 相続財産が全く存在しないと信じたこと

相続財産には積極財産も消極財産も含まれます。
そのため、相続債務の存在は知らなかったものの、遺産となる不動産などの存在を知っていた場合には、この要件に当たらないとされる可能性が生じます。

高等裁判所の裁判例には、不動産が遺産にあることを知っていた場合に、相続放棄を認めたものがあります(東京高裁平成19年8月10日決定)が、裁判所は、この不動産がほとんど価値のないものと認定し、「相続財産にほとんど財産価値がな(いと信じていた)」として相続放棄の受理を認めました。
相応の積極財産があることを知っていた場合には、熟慮期間がスタートしてしまう可能性が高まるため注意が必要です。
 

例外要件② 信じたことに相当の理由があること

先ほどの最高裁決定では「被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際関係その他諸般の状況からみて・・相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情」がある場合には、相当な理由があると言えます。
相続人の年齢や生活状況、日常的な交際の状況などを適切に説明することが必要です。

 

熟慮期間中の調査が必要

上記の最高裁決定の判断準則に示されたケースに限られないとの解釈や、相続放棄の申述の受理が比較的ゆるやかになされるとの指摘もあり、相続開始から3か月を過ぎても間に合うこともあります。

ただ、相続放棄の申述受理は、相続放棄の効力を確定するものではなく、相続債権者が別途訴訟を提起したときには、この訴訟手続の中で相続放棄の効力が審理されます。訴訟手続では、上記の昭和59年最高裁決定に準拠した厳格な審査が行われていると指摘する文献もあり、注意が必要です。
熟慮期間は延長することができ、再延長も可能です(民法915条1項ただし書)。1回目の延長は比較的認められるケースが多いように感じます。
遺産に積極財産が存在することを認識し、ご自身が積極財産を相続するわけでないのであれば、多額の費用がかかるわけではありませんので、相続放棄の申述を積極的に行うようにしましょう。

 

お気軽にお問合せ・ご相談ください

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
011-596-7944
受付時間
9:30~18:30
定休日
土曜・日曜・祝日

お気軽にお問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

011-596-7944

<受付時間>
9:30~18:30
※土曜・日曜・祝日は除く

フォームは24時間受付中です。お気軽にご連絡ください。

新着情報・お知らせ

2024/02/29
2023/11/03
「民事信託の預金管理①」を更新しました。
2023/06/30
「マンション節税の行方」を更新しました。
2023/04/30
2023/02/05

こう法律会計事務所

住所

〒060-0042
北海道札幌市
中央区大通西10丁目4
南大通ビル2F

アクセス

札幌市営地下鉄東西線 西11丁目駅3番出口直結
専用駐車場:無し

受付時間

9:30~18:30

定休日

土曜・日曜・休日