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弁護士・公認会計士 洪 勝吉
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高齢化社会の進展とともに、遺言がなされる数も増加していると言われています。その中で、認知症等により判断能力が十分でない高齢者の作成した遺言について、後日、その有効性に争い生じるケースが生じています。
【目次】
1.遺言の有効性に関する判断
2.資料の収集
3.認知症スケール
4.認知症の症状
遺言は、法律でその方式が決められており、これに従わないと無効とされるものです(民法960条。「要式行為」と呼ばれます)。
このほかに、遺言をするためには、一定の判断能力が必要です。これを「遺言能力」と呼んでいます。
民法961条は15歳になれば遺言を作成することができると定めています。ただ、遺言については最終意思を尊重するという性格などもあるため、15歳に満たない程度の判断能力でもよいと一般的に理解されています。
民事裁判では、遺言能力の程度を一般的抽象的に検討するというよりは、遺言者の年齢や病状、発病と遺言の時期的関係、遺言時やその前後の言動、日頃の遺言に関する意向、受贈者との関係、遺言の内容など具体的な事情を総合的に評価して、遺言の有効性を判断する傾向にあります。
認知症との関係で遺言が無効になるのは、上記のような具体的な事情により、認知症が重度である場合や、遺言内容などが不合理な場合ということになります。
遺言能力に疑問がある場合には、遺言者の病状の程度が重要な争点になりますので、次のような資料を収集します。
・病院のカルテや診断書、CT、MRIなどの検査結果
・要介護認定のための資料(主治医意見書、訪問調査結果など)
・介護記録
・投薬状況が確認できる資料
・認知症の評価スケール(長谷川式テストの結果など)
以上のような資料を収集・分析し、認知症の程度が相当に重度と言えるかどうかを検討します。
長谷川式テスト(HDS-R)の結果については、遺言能力が問題となった裁判例でも数多く言及されています。長谷川式テストは、主に記憶力を中心とした認知機能障害を大まかに知ることを目的にした30点満点のテストで、20点以下の場合に認知症の疑いがあるとされ、これによりかなりの精度で認知症と非認知症を分けることができるとされています。
裁判例を検討した文献によれば、点数が下がるにつれ遺言能力が否定される傾向がうかがわれ、10点代なら半々くらい、1桁なら能力が否定されるものが多いと分析されているものもあります。
ただ、0点に近いものならともかく、長谷川式テストの結果だけで遺言の有効無効が判断されるものでもありません。
認知症には中核症状と周辺症状があり、認知症の中核症状としては、記憶力の低下、認知機能の低下が挙げられます。妄想、徘徊、失禁、不潔行為、せん妄などは、認知症の周辺症状に当たり、異常行動として目につきやすいところですが、裁判例では周辺症状よりも中核症状の推移が注目される傾向にあります。
中核症状の一つである記憶力の推移では、初期は新しいことを記憶する能力(記銘力)の低下が始まり、中期では短期記憶が低下し,後期になると長期の記憶(自分の職業,家族,生年月日,自分の名前など)を忘れるという順序になります。
もう一つの中核症状である見当識については、初期に時間的見当識が失われ、中期に空間見当識がなくなり(帰宅できない、どこにいるか分からない),後期になると人物の見当識が失われるという推移をたどります。
認知症の中核症状が後期の段階に至っていると考えられる場合には、遺言能力が否定されやすくなります。
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