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弁護士・公認会計士 洪 勝吉

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遺言の実例-夫婦で遺言を残すケース

夫婦双方で遺言を残すケースは少なくありません。今回は事例で見ていきましょう。

夫婦で遺言を残す事例

事例

札幌太郎さんは定年退職後、年金収入で暮らし、札幌市内の自宅土地建物を所有しています。
花子さんは主婦ですが、花子さんの両親から相続した賃貸アパートを北広島市に所有し、賃料収入があります。
太郎さんと花子さんには、長男(一郎さん)と長女(良子さん)がいます。
一郎さんには、子どもが一人(太一さん)いますが、妻と死別して、太郎さん花子さんと同居しています。
良子さんは、花子さんが所有する賃貸アパートに一人で暮らし、このアパートの管理をしています。

太郎さんと花子さんの希望は次のようなものです。
①夫婦のどちらかが死亡したときは、いったん他方に全ての財産を相続させる。
②夫婦のどちらも死亡したときは
 自宅は、同居している太一さんに相続させる。
 アパートは、管理している良子さんに相続させる。
③一郎さんと良子さんは、あまり仲がよくないので、二人の話し合いが必要になる事態は避けたい。

共同遺言に注意

民法975条は、「遺言は2人以上の者が同一の証書ですることができない」と定めています。「2人以上の者が同一の証書でする遺言」のことを共同遺言と呼びますが、共同遺言は、この条項に違反するものとして無効になります。
遺言者は、いつでも遺言を撤回することができます(1022条)が、共同遺言にすると、他の遺言者の意思によって制約を受けやすいことなどから禁止されています。
2つの遺言が同じ用紙に記載されているというだけで、ただちに共同遺言に該当するわけではありません。
しかし、遺言の効力をめぐって争いになる可能性は極力低くしたほうがよいので、実務上は、夫婦両名が、それぞれの遺言書を同時に作成することが行われています。
 

将来取得する予定の財産について

遺言者が遺言書を作成するときに所有する財産は、遺言の対象とすることができます。
しかし、遺言書の作成時点と、将来の相続開始時とでは財産関係に変動が生じています。
そのため、「遺言者の有するその他の一切の財産を〇〇〇に相続させる」といった記載にしておくことは多いです。

今回の事例では、太郎さんが先に死亡したときは、花子さんに自宅を相続させ、花子さんが先に死亡したときは太郎さんにアパートを相続させるという希望がありますが、このように遺言書を作成したときに、将来特定の財産を取得することが予測され、この財産を相続させたい者が確定しているのであれば、将来遺言者が取得していることを条件として、この財産を「相続させる」旨の遺言をすることができます。
 

予備的遺言について

予備的遺言は、1番目に財産を承継させたい人物が死亡した場合に、2番目、3番目の財産の承継者を事前に定めておくために行うものです。

今回の事例でいうと、太郎さんは、自宅を花子さんに相続させると遺言しますが、花子さんが先に死亡した場合には一郎さんに相続させるとも記載しておきます。これが予備的遺言です。
遺言の作成から相続開始(遺言者の死亡)までは、どの程度の期間になるかは通常分かりません。
今回の事例では、太郎さんや花子さんが死亡する前に一郎さんが不幸にも亡くなってしまうことも考えておく必要があります。
一郎さんが亡くなってしまった場合、一郎さんに相続させる旨の遺言を残していても、自動的に一郎さんの子供である太一さんに自宅が承継されるわけではありません。
相続する予定だった一郎さんが死亡していれば、原則的には、承継者が指定されていない財産として、相続人である長女(良子さん)と孫(太一さん)との間で遺産分割協議が必要になってしまいます。
不幸にも一郎さんが死亡してしまったときに遺言を変更することも可能ですが、そのときには遺言者が認知症にかかっていて遺言を残せる状態でないこともあり得ますので、様々なケースを想定して遺言を作成する必要があるのです。
そこで、一郎さんの死亡に備えるために、先に一郎さんが死亡したときは、太一さんに相続させるとの予備的遺言をしておきます。
 

まとめ(遺言の例)

以上の検討を踏まえると、太郎さんと花子さんは、次のような遺言を残すことになります。

太郎さんの遺言
1 遺言者(太郎)は、〔自宅土地建物〕を、遺言者の配偶者・花子に相続させる。
2 遺言者(太郎)は、万が一、遺言者より先に、配偶者・花子が死亡した場合には、前条記載の財産を、遺言者の長男・一郎に相続させる。
3 遺言者(太郎)は、万が一、遺言者より先に、配偶者・花子および長男・一郎が死亡した場合には、第1条記載の財産を、遺言者の孫・太一に相続させる。
4 遺言者(太郎)が、遺言者の配偶者・花子から、〔アパート土地建物〕の所有権を取得していたときは、これを遺言者の長女・良子に相続させる。

花子さんの遺言
1 遺言者(花子)は、〔アパート土地建物〕を、遺言者の配偶者・太郎に相続させる。
2 遺言者(花子)は、万が一、遺言者より先に、配偶者・太郎が死亡した場合には、前条記載の財産を、遺言者の長女・良子に相続させる。
3 遺言者(花子)が、遺言者の配偶者・太郎から、〔自宅土地建物〕の所有権を取得していたときは、これを遺言者の長男・一郎に相続させる。
4 遺言者(花子)は、万が一、遺言者より先に、配偶者・太郎および長男・一郎が死亡した場合には、前条記載の財産を、遺言者の孫・太一に相続させる。

 

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