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弁護士・公認会計士 洪 勝吉

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遺言書だけでは問題が生じかねないケース

遺言は、遺言者の最後の意思表示として尊重され、相続争いを防止するものとして、その作成が推奨されることが多いです。
しかし、遺言を残すだけでは遺言者の意思が実現できないケースもあります。
具体的にどのような場合に問題が生じることがあるか見ていきます。

相続争いの原因とは

相続争いが生じる原因にはさまざまなものがあります。

一つ目としては、法律の定めに対する誤解です。
例えば、子供のいない夫婦の場合、遺言を残さなくても配偶者に全ての財産が相続されると誤解しているケースは少なくないです。
このケースでは、亡くなった方に兄弟姉妹がいると相続人となり、兄弟姉妹が既に死亡していても甥姪が相続人になります。
兄弟姉妹には遺留分がありませんので、遺言を残しておけば紛争にならずに相続手続きが終わりますが、誤解して遺言がないと兄弟姉妹を交えて遺産分割協議をする必要があります。

二つ目としては、相続人に頑なな性格の人物がいると危険です。これまでの経緯を踏まえた柔軟な解決が難しくなります。
法定相続分に固執する、自身の特別受益は認めないが他の相続人の特別受益を強く主張する、自身の寄与分は強く主張し他の相続人の寄与分は認めない、といったケースです。
相続人の一人が事実上親の財産を管理しているような場合で、相続財産の全体像を明らかにしない、遺産分割協議に応じないといったこともあります。

三つ目としては、分配対象の財産(遺産)に柔軟性がない場合です。端的にいうと、現金が少なく、不動産や非上場株式など換価に困難がある財産が多い場合は、柔軟な解決が難しくなり、相続争いの原因になります。
 

遺言による解決

遺言の中に、誰にどの財産を相続させるかを明記してあれば、明記された財産については遺産分割協議が不要になります。
そのため、遺言には相続争いを防止する機能があります。
特に公務員である公証人が作成する公正証書遺言が安全とされます。
 

遺言しかないことの問題点

遺言が無効とされる危険

公正証書遺言があったとしても、遺言能力がないとされたり、口授という手続に問題があるとされた例が複数あります。
なかには、公正証書遺言が本人に成りすました別人により作成(偽造)された可能性が高いとして、無効になった裁判例(高松高裁平成21年9月28日判決)もあります。
 

遺言の内容が変更される危険

遺言はいつでも撤回可能であり(民法1022条)、撤回する権利を放棄することもできません(1026条)。前の遺言と後の遺言の内容が抵触するときは、抵触する部分は撤回されたものとみなされます(1023条)。
例えば、エンディングノートや日記などに、遺言のような表現の記載があり、日付や押印も存在すれば、それが遺言とされることもありえなくはないです。
遺言者の判断能力の低下につけこんで、新たな遺言が作成されてしまうケースも、私の経験でも現に存在します。
また、自筆証書遺言の場合、法務局の保管制度を利用していなければ、遺言書が隠匿や破棄される危険も小さくはないでしょう。

 

成年後見制度との関係

成年被後見人になる前に遺言を残しておいたとしても、後見人が被後見人の財産の一部を売却してしまうことがあります。
例えば、不動産を遺贈する旨の遺言を作成していたとしても、後見人がこの不動産を売却処分することがないとは言えません(被後見人の生活のために現金が必要である場合などにありえます)。
そうすると、遺贈の対象物がなくなり、遺贈の効力が生じません(民法996条1項。広島高等裁判所平成30年9月27日判決では、成年後見人による遺贈の目的物の処分により遺贈の効力が生じないとされました)。

特定の預金口座を遺贈などの対象にしていた場合も、遺言の存在を知らずに、成年後見人が預金の解約して残高を集約をしたりすることもありえます。
逆にペイオフの関係で1000万円を超える預金が存在した場合には、成年後見人が他の口座に残高を散らしたりすることもあるでしょう。
後見制度支援信託制度の利用のために、遺言の対象になっていた預金口座が解約され、信託銀行の信託に付されることもあります。
このような場合に、遺言の対象であった預金口座が存在しなかったり、残高が減少していたときは、遺言の効力が意図したとおりに生じない場合がでます。

 

負担付遺贈の問題点

親族の一人が障害を抱えているなど、保護が必要なひとがいる場合に、遺言者が死亡した後の要保護者の生活の支援を指示(負担)し、その代わりに、遺産を渡す(遺贈)といった遺言(合わせて負担付遺贈といいます)を残すことは可能です。
しかし、遺言者の死亡後に、遺産を受け取った受遺者が、指示された負担をしっかりと果たさないことがあります。
この場合、遺言の取消を家庭裁判所に請求するとの定め(1027条)はあるのですが、遺言の取消を請求することができるのは相続人に限られ、要保護者が請求できない場合もあります。

また、要保護者が相続人であっても、取消を求める負担は大きいものがあります。
最近の裁判例では、長男に対し、次男の生活の援助をするよう負担付遺贈がなされたが、負担を履行しないとして次男が遺言の取消を求めた事例で、遺言の取消が認められなかったもの(仙台高裁令和2年6月11日決定。原審の福島家庭裁判所いわき支部令和2年1月16日審判では遺言の取消が認められていた)があります。

以上のように、要保護者の生活援助や、事業の承継が絡むものなど、遺言者死亡後に遺言者の意思を反映させたい度合が高い場合には、遺言だけでは実現されないことがある点には留意が必要です。
他の制度(民事信託、任意後見など)利用も念頭に置いて、検討する必要があります。

 

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