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弁護士・公認会計士 洪 勝吉

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不動産の無償使用の法律関係と遺産分割

被相続人の所有する土地や建物を、被相続人の生前、その許諾を得て、相続人が無償で使用していることは少なくありません。
このような無償使用がどのように法律上整理されているか、遺産分割の中ではどのように取り扱われるか見ていきます。

建物の無償使用

建物の使用貸借契約の成否

不動産を無償で使用する場合は、使用貸借の成否が問題となることが多いですが、無償での使用ですので、当事者間の信頼関係の有無がその成否に影響を及ぼします。

親子間では、他人である第三者との使用貸借とは異なり、親子という特別な関係がありますので、使用貸借の成立自体には争いがないことが多いです。

最高裁で判断が出たものの中では、共同相続人の一人(子)が相続開始前から被相続人(親)の許諾を得て、被相続人の所有建物において被相続人と同居していた場合は、特段の事情のない限り、被相続人とこの共同相続人との間で、相続開始時を始期とし、遺産分割時を終期とする使用貸借が成立したものと認められます(最高裁平成8年12月27日判決)

したがって、被相続人が死亡した場合は、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり、同居の相続人を借主とする建物の使用貸借契約関係が存続するため、引き続き無償で使用できることになります。

この最高裁の事例と異なり、相続人と被相続人が同居していない場合は、使用貸借の成立に消極的な事情にはなりますが、無償での使用に長期間異議が出されていないという事情があれば、所有者が無償使用を認めていることになりますし、親子関係に問題がなければ異議が出ないことが通常ですので、結局、親子関係では使用貸借の成立が肯定されやすいでしょう。

 

建物の無償使用が特別受益に当たるか

特別受益に当たるかどうかの最初のポイントは「贈与」(民法903条1項)かどうかです。「贈与」でなければ特別受益には当たりません。

そして、相続人が被相続人の所有建物に被相続人と同居していた場合は、その相続人には独立の占有がなく、贈与とは言えませんので、特別受益には当たらないと考えられます。

被相続人と同居していなかった場合など、独立の占有が認められる場合でも、建物の使用貸借は、恩恵的な要素が強く、遺産の前渡しという性格が定型的に薄いと考えられます。
また、第三者への対抗力がなく明渡しも容易で、経済的価値がないに等しいことや、仮に特別受益に当たるとしても、遺産に持ち戻す必要がないとの被相続人の意思(持ち戻し免除の意思表示)を認めることが相当であることなどから、特別受益になることはないと考えるのが通常です。

 

土地の無償使用

土地の使用貸借契約の成否

さきほどの最高裁平成8年12月27日判決は、居住用建物についての判示ですので、この判例の内容が直ちに妥当するわけではありません。
ただ、土地の無償での使用(被相続人の土地上に相続人の一人が所有する建物が建てられている場合が典型的です)についても、当事者間の信頼関係の有無がその成否に影響を及ぼすことは同様です。

親子関係であれば、土地の無償使用についても、無償での使用に長期間異議が出されていない状況があれば使用貸借契約の成立が認められることが多いでしょう。

 

土地の無償使用が特別受益に当たるか

相続人が、被相続人の所有土地上に、被相続人の許諾を得て建物を建て、その土地を無償で使用していた場合は、生計の資本としての贈与と同視することができ、特別受益に当たると考えられます。

ただし、例えば、相続人の所有建物に、被相続人が無償で同居しているような場合は、被相続人も利益を得ていますので、「贈与」といえるかどうか問題となりえますし、持戻し免除の意思表示があったと認められる可能性が高いでしょう。
 

特別受益の評価額

土地の無償使用についての特別受益の対象が、土地の使用借権の価値相当分なのか、地代相当額を支払わなくて済んだという地代相当額なのかは一つの問題です。後者の場合、使用の年月が長ければ金額が前者よりも多額になることが多いでしょう。

この点については、特別受益は、遺産の前渡し分を遺産分割に際して考慮し、持戻し計算する制度ですので、相続開始時の遺産である土地の価値の減少分である、使用借権相当額が特別受益と実務的には考えれています。
地代相当額は、土地という遺産の価値とは関わらないため、これが特別受益額になるわけではないというと理解です。
そして、使用借権相当額は、更地価格の1割~3割程度と考えられることが多いとされています。
 

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